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【2026/06/14 07:55 】 |
アメリカ黒人の歴史 (岩波新書) | 経済的に悪用された アメリカ黒人の歴史
 アメリカにおける黒人問題を、事の起こりから1980年代まで、政治史・経済史・社会史の観点から概説した著書。自発的に北アメリカに来たわけではない唯一の成員としての黒人の苦難の歴史を、彼らを悪用した人たちの振る舞いを浮き立たせることで広く理解できるように工夫している。全十章、巻末には「アメリカ黒人史略年表」が添えられている。



 その歴史を辿っていけば、彼らを悪用する人たちの意図が一貫して経済的利得に基づくものだったことに気づく。それは当初の三角貿易のときだけに限らず、南部の大土地プランテーション全盛のときにも限らず、奴隷制反対の論理の中にも黒人を経済的損得勘定の上で見る視点があり、北部が奴隷制の完全な撤廃を頓挫させた影にも、ジム・クロウにも、リンチにも、経済的利害が背景としてある。まず第一に自分の魂を経済的利得を前に売り飛ばし、その後でアメリカ黒人を人間とみなさないことで良心を売り飛ばし、その振る舞いを無理矢理な理屈をこねて合理化し、法制化し、判例化し、その表面上の現われが差別の苛烈さとしてむき出しになってくる。



 差別について言えばそれは麻薬にも似た蜜の味で、差別は快楽の一つとして機能し、差別する者は被差別者に快楽の道具として依存した上で自らの心理的な快を得るのが常だが、麻薬と同じく人の脳を麻痺させて、狭い内輪の人以外への素朴な善意や相互理解力や自制心を腐食させる。(差別的言動や行動を取る人は、「こういうことをしないと安心して他人と向き合えないほど弱くて卑怯です」ということをあらわにしていることに気づかないほど劣化していく。)社会関係も麻痺させて社会的な緊張・対立・紛争を呼び、地域や国家の生産性や安全性やホスピタリティを低下させる。ひいては経済的・政治的なリスク要因としても無視できなくなっていく。そんなメカニズムが歴史として展開したのがアメリカ黒人をめぐるアメリカ史であることを、この著書は伝えてくれる。



 本書の末尾では今でも経済的な問題としての黒人問題の深刻さがあることを伝えているが、それは黒人が大統領となった今でも本質的に変わっていないのだろう。音楽やスポーツで自分たちが知った気になってしまいがちなアメリカ黒人についての別の面を教えてくれる一冊。

アメリカ黒人の歴史 (岩波新書)
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【2010/06/09 09:19 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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